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No.
07

COMING KOBE実行委員会
上田 裕吏さん
取材日 : 2024年12月12日

[ 写真:上田さん ]

阪神・淡路大震災の際の支援に対する恩返しや被災地の復興支援を目的に音楽を通じたチャリティーイベントとして開催されているCOMING KOBE。発起人であり、父でもある松原裕さんから代表としての役割を引継ぎ、現在、COMING KOBE実行委員会の中心として活動されている上田佑吏さんにお話を伺いました。

チャリティーイベント COMING KOBEとは

COMING KOBEはどのようなイベントですか。

上田さん:僕の父が立ち上げたチャリティーイベントで、今年で21回目の開催になります。阪神・淡路大震災当時に助けていただいた方々に、被災地神戸がこんなに復興・成長したということを、恩返しも込めて伝えるため、立ち上げられたイベントです。神戸のまちがこれだけ元気になりましたということを皆さんに伝えるだけでなく、現在困っている方々に、今度は恩返しをするためにも、会場内で募金を集めて、集まったお金で被災地支援をする等、音楽を通して防災や減災を考えるきっかけになれば、という想いで開催しています。

COMING KOBEに対する想いを教えてください。

上田さん:僕自身は19歳のとき、5年前に初めてこのイベントに関わったのですが、阪神・淡路大震災から30年が経ちますけど、正直震災のことを知らなくてもいいとは思うんです。わざわざ掘り下げる必要もないのでは、とも思うんですけど、やっぱり地震は絶対起きるものなので。そうなった時に当時の知恵とか教訓というものが絶対に活かされると思っています。もうこれ以上誰かに亡くなって欲しくないし、守れるのであれば命を守りたい。父から跡を継いで音楽の仕事を続けていますが、音楽という僕たちの強みと震災、防災、減災とを組み合わせて、COMING KOBEというイベントをさらに成長させ、全国の人みんなが知るイベントにしていきたいです。

COMING KOBEを引き継いでみて

お父様から仕事を継ぐことになったとき、どう思いましたか。

上田さん:正直、荷が重かったのは重かったです。大学1年生の年に父が亡くなって跡を継いだのですが、右も左も分からないですし、音楽の知識があるわけでもなかったので。何万人もの人を集めるとか、色んな会場を押さえるとか、経験したことがないことだったので、当時は不安しかなかったですね。でもやっぱり父がやってきたことを無駄にしたくないという想いで、がむしゃらに食らいつきました。不安でしたけど、自分がやるという使命感はあったと思います。続けることに意味があるイベントですし、ここで終わらせてはいけないというみんなの想いがあったので、父が亡くなってからも続ける決断をしたのだと思います。僕も震災を知らない世代なので、次は父からもらったバトンを、さらに下の世代に伝えていくというか、さらにどんどん広げていくという想いを持っていました。

COMING KOBEにはどんな方が参加されていますか。

上田さん:このイベントの来場者の半数近くが20代で、阪神・淡路大震災を経験していない世代です。東北等の他の被災地から来られる方もいるので、震災を知らないとは一概に言えませんが、それぐらい震災を経験していない人たちが参加していて、まさしくその世代が僕たちのターゲット層だと思っています。このイベントを通じて震災の教訓や想いを震災を知らない世代に伝えていかないといけないので、どちらかというと30代以上の震災を経験している世代よりは知らない世代、皆さんぐらいの10代20代前半の方々をターゲットに、イベントを作り込んでいます。10代・20代のお客さんは、正直震災とか防災を意識して来ていないことが多いですが、そういった人たちに音楽を楽しんでもらって、減災や防災に触れてもらうブースも体験してもらって、帰る時には防災グッズを買ってもらう。そんなかたちで繋がって、少しでもいいので頭の片隅に防災や震災のことが残ってくれたらいいなと思っています。

COMING KOBEに取り組むなかで一番やりがいを感じるときはどんなときですか。

上田さん:お客さんの表情を見ると、やっぱりやって良かったと思いますね。ライブを見ている時、泣いている人もいるし、笑顔の人もいる。人の感情を揺さぶる何かをその日1日で作れたのだと実感すると頑張って良かったと思いますね。イベントが終わると、めちゃくちゃ開放感があって、そこから来年のことを考えると、正直もういやだみたいな気持ちもありますが、お客さんの表情を考えると頑張れますね。

震災の教訓をつなぐということ

震災から30年が経って震災の記憶が風化してしまうことをどう思いますか。

上田さん:別に風化が良いとか悪いとかではないと思っています。被災された方々は当時の映像をテレビ等で見る時に傷心される方も多いですし、自分がもし被災した場合、その映像は正直見たくないと思うので、目に見えないものを伝えていくべきだと思っています。COMING KOBEの会場内で募金を集めて、そのお金を被災地に直接届けたりしているのですが、現地の被災された方々からは、すごいエネルギーを感じます。ご家族を亡くされた方もいますし、自分の家がなくなった方もいて、そういった方々に僕は逆に元気をもらったんですよね。このパワーってなんなのだろうと、未だに理解できてないのですけど、神戸の人たちにもそのエネルギーはあると思っていて、被災地だからこそある底力というか、負けてられないという魂というか、その想いを被災地に行って体感しました。そういった想いを震災を知らない世代に伝えていきたいですし、震災の教訓は絶対に伝えていかないといけないと思っています。想いや教訓等、目には見えない形、心の中にある形を伝えていくことが、大切なのだと思っています。

震災を経験していない10代20代にメッセージをお願いします。

上田さん:考えたくはないですが、自分の回りの人たちが、今後起きる災害で亡くなるかもしれないですし、心を傷つけられることもあるかもしれません。そういったときに僕たち震災を知らない世代が少しでも支えになれたらと思いますし、僕ら自身が命を守れれば、災害後の復旧・復興に向けて立ち上がっていけると思うので、そういう想いを持ってほしいです。震災を経験された方々が紡いでくれた教訓や、この神戸の街並みは震災を経験された方々の頑張りで出来上がっているものです。若い世代の皆さんもそれらに対する感謝の気持ちを持っていると思いますが、そういった想いを今後も伝えていけたらと思います。

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