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No.
08

阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター
事業部運営課長
森川 徹さん
株式会社コングレ 運営ディレクター
「人と防災未来センター」担当

杉左近 美紀さん
取材日 : 2024年11月24日

[ 写真 左から:杉左近さん 森川さん ]

阪神・淡路大震災の経験を語り継ぎ、その教訓を未来に生かすため、災害情報等を発信し、防災啓発に取り組んでいる「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」。この施設の運営に携わっている運営課長の森川さんと、施設内で来館者への案内・説明等を担っている運営ディレクターの杉左近さんにお話を伺いました。

阪神・淡路大震災から今の取組みへ

震災当時、何をされていましたか。

森川さん:当時は兵庫県の職員として、龍野市にある土木事務所に勤務しており、近くの職員住宅に住んでいました。地震の被災状況は、阪神間ほどひどくはありませんでしたが、揺れたなという感覚はありました。早めに職場に出勤したのですが、職場の状況としては、机の引き出しが全部開いていたり、窓ガラスが一枚割れている程度だったと思います。でもだんだん県内の被害状況が分かってきて、大変なことになったと思いました。

杉左近さん:当時は航空会社で客室乗務員をしていて、空港近くのホテルで寝ており、地震で下から突き上げられるような感覚を覚えています。伊丹空港では、建物に大きな被害がありましたが、滑走路は無事だったので、飛行機は震災当日も動いていたと記憶しています。

災害への対応では何が重要だと思いますか。

杉左近さん:前職である客室乗務員には、接客要員と保安要員という役割があり、接客ノウハウだけでなく、地震等の緊急事態が起きた時の対応も学んできました。有事の際、お客様は絶対にパニックになりますので、スタッフが落ち着いて対応することが重要です。2024年1月2日のJALの航空機事故では、乗員、乗客は全員脱出できたことが報じられました。乗務員の適切な対応がなされた結果だと思いますが、乗務員の職務の半分以上をそういった緊急事態が生じた場合の訓練が占めているんです。事故があった時になぜああいう行動ができるかというと、それを普段からしているからです。そのような人材をセンターでもたくさん育てることが災害対応でも重要なのだと思います。

これからの活動について

センターの展示内容等で工夫されている部分はありますか。

杉左近さん:人と防災未来センターの東館がリニューアルされているのですが、リニューアルにあたっては、お子様も楽しく学べるような工夫をしていて、徐々に来館者の層も変わってきたように思います。ただ、震災当時の状況を追体験できる「1.17シアター」が怖すぎて、小さなお子さんのトラウマになってしまうと言われることもありました。そのため、シアターの説明の際には、親御さんからお子さんに、今から見る映像は怖いけど、とても重要なものだということ、我慢できなかったら途中で出て行っても良いということを事前に話してもらう等を行うことで、このセンターを必要以上に怖がらせないようにしないといけないと思っています。

現在の活動の課題や今後の展望などはありますか。

森川さん:2025年4月には、関西で万博が開催され、国内外から多くの人が関西に来られます。このセンターの最大のミッションは震災の経験・教訓を伝え、今後起きる災害への備え、減災に繋げることです。こうした機に国内外の方々にセンターに足を運んでもらえるようにしたいですね。あとは、このセンター自体を継続的に運営していくことです。コロナ禍で客数が減り、今年になってもコロナ前の水準に届いていないので、今後も広報をしっかりして、センターのことを知ってもらい、足を運んでもらって、学びにつなげていかないといけません。

震災や防災を伝えることについて

震災や防災を伝えるうえで大切にしていることは何ですか。

杉左近さん:センターに来られるお客様から、揺れる体験ができる施設はありませんか、とよく聞かれるのですが、このセンターでは揺れること自体の体験よりも、その後どう逃げるか、緊急地震速報が流れたら何をすべきか等を考えることに重きを置いています。もちろん揺れる体験もアトラクション的に良い部分もありますが、このセンターでは、その先のことを考えてもらえるようにしたいと思っています。

震災を経験していない世代が震災や防災について伝えていくためには、どのような工夫が必要だと思いますか。

森川さん:震災や防災について、経験した人やよく知っている人の話を聞いて、それをそのまま伝えることも良いと思いますが、主語を自分にして伝える方が伝わりやすいと思います。自分が見聞きしたことに対して、自分自身がどう思ったか、それを自身の目線で伝えることによって、自分ごとになり、聞く側にも伝わるのだと思います。

震災を経験していない10代・20代に対してメッセージをお願いします。

杉左近さん:人と防災未来センター東館3階には、リアルに再現された住居やコンビニで災害が発生した際に、自ら状況を判断して避難行動につなげるためのトレーニングができる、ミッションルームという施設があります。自分ごととして考えてもらうために、そのミッションルームを皆さんに体験してもらいたいですね。身近な状況を具体的にイメージして考えてもらうことが大事だと思います。例えば大学生だったら、夏休みの合宿先で災害が起きたらどうしないといけないかな、とか。避難するためには、外出先のハザードマップを把握しておかないといけないな、とかですね。とにかく自分ごととして防災を考えてもらいたいです。

森川さん:特に南海トラフ地震は、一般的に2030年を起点にプラスマイナス10年程度で起こると言われています。ということは、若い皆さんはバリバリ活躍している時期に地震が発生するということです。地震は他人事ではなく、近い将来確実に起こるということを肝に銘じ、備えを万全にして欲しいですね。

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