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No.
06

株式会社フェリシモ
武智 直久さん (未来価値開発室 部長)
山川 尚美さん (顧客体験デザイン部)
藤原 大樹さん (顧客体験デザイン部)
加藤 紗貴子さん (未来価値開発室)
平野 佳奈さん (顧客体験デザイン部)
取材日 : 2024年11月19日

[写真 左から:平野さん 武智さん 加藤さん 藤原さん 山川さん]

阪神・淡路大震災が発生した1995年に本社を大阪から神戸に移転した株式会社フェリシモ。復興する神戸とともに30年、被災地への支援や防災事業にも取り組んできました。その中でも「もしもしも 備蓄でお守り ~KOBE BOX~」はこれまでの備蓄食とは異なる提案をしています。

「もしもしも 備蓄でお守り ~KOBE BOX~」は、約1日分の食事をつめこんだ1日3食プラスおやつのパッケージです。2024年に販売を始め、全国から注文が入っているといいます。第一弾ではいずれも神戸の企業である、フジッコ株式会社、株式会社神明、エム・シーシー食品株式会社、モロゾフ株式会社、神戸ポートピアホテルの協力を経て、スパイスの効いたカレーをメインに惣菜や甘いお菓子など、非常時でも食事を楽しめる内容となっています。

神戸の企業と備蓄食を

フェリシモは定期便の商品販売をメインとする企業ですが、震災の経験・教訓から備蓄食を販売したいという想いがあったそうです。その想いの一方で、フェリシモだけでは備蓄食そのものを作ることができないという問題がありました。そんな中、同じ神戸市内の企業であるフジッコ株式会社が宇宙食の販売を行っていることを知ります。宇宙食と備蓄食、限られた環境で食べるものという共通点から、フェリシモはフジッコ株式会社に声をかけ、備蓄食の販売へ動き出しました。

武智さん:いわゆる「備蓄食」のサンプルを以前いただいたことがあったのですが、あまり食べる気にならなかったんですよね。何となく美味しそうじゃない。でも、宇宙食と聞いたらちょっと食べたくなりました。宇宙食と備蓄食は同じものではないですが、震災から30年を迎えるということもあり、自分たちにできることに取り組んでいこうと思い、フジッコさんをはじめ、市内の企業さんと連携して備蓄食の通信販売に踏み出しました。

そう話すのは、KOBE BOX開発に携わった武智直久さんです。個人的に、いわゆる備蓄食といわれるものは賞味期限が長い一方、美味しくなさそうというマイナスイメージがありました。宇宙食がラインナップに組み込まれることで、ワクワク感や宇宙食への関心から、そのイメージを脱却できると考えたそうです。また、神戸のメーカーのみで商品をラインナップし、神戸という地域の魅力と震災への共通した思いを伝えたいと思いました。

おいしさか、保存性か。備蓄食へのハードル

一般的な備蓄食の賞味期限は3〜5年ほどのものが多いのですが、食品メーカーには「お客様に美味しく食べてほしい」という想いがあり、備蓄食として求められる長い賞味期限を理由に提案を断られることもあったそうです。また、お客様にせっかく購入いただいても数年の間にその存在を忘れ、賞味期限が切れてしまうのでは、という心配もあるなど、長期間備蓄してもらうには課題がありました。

そこで、武智さんが目を付けたのがローリングストックです。備える・使う・補充する、の循環を繰り返し、一定量の食料品や生活必需品の備えを目指すローリングストックは、災害対策において重要な役割を果たします。その期間を短くすることで美味しさと防災の両立を目指しました。このボックスでは、最短6ヶ月のスパンでのローリングストックを提案し、フェリシモの定期購買システムと連動して新しい備蓄の形を目指しています。

武智さん:長い賞味期限の備蓄食を作っても、食べた時においしくないと思われてしまっては、食品メーカーさんからするとデメリットになってしまう。半年間の賞味期限でも、おいしい食事を提供し、半年間何も災害が起きなかったということに感謝しながらローリングストックしてもらうことで、防災について考えるきっかけになればと思っています。

「自分たちにできることは限られている。これはあくまできっかけ作り」とフェリシモの企画チームの皆さんは繰り返し強調します。自然災害が増加する近年、防災への意識は高まりつつありますが、実際にそれを実行するのは難しい。自助、最低限できる備えのきっかけとして備蓄でお守り「KOBE BOX」を利用してほしいと言います。人によって必要な備えは異なります。ボックスを軸に、離乳食やおかず、飲み物などをカスタマイズすることで、みんなで考える防災につながる。防災を、非日常から日常へ取り入れられるような提案をフェリシモは続けています。

インタビュー記事の中で紹介している
KOBE BOX (2024年3月発売)
現在はKOBE BOX2 (2025年12月発売) を
販売中です

震災を経験していないからこその発信を

また、フェリシモの公式SNSアカウントでは、「もしもしも」の商品を動画にして紹介しています。実際に商品を使ってみることで気が付けることなどをリアルに発信しつつ、明るい雰囲気で場面に応じた商品の紹介を行っています。SNSでの発信に取り組む若手社員の皆さんにもお話を伺いました。

加藤さん:昨年の元旦、地元の北陸に帰省していた際に起きた能登半島地震で、これまで生きてきた中で一番大きい揺れを体験しました。その時に私自身も何かしなきゃいけないという意識がすごく芽生えて、SNSで防災グッズ等の情報を発信する際には、自分が実際にその商品を使用した感覚をお伝えすることを大切にしています。幸い深刻な被災経験がなく、実際に防災グッズを活用したことがない私たち世代がする失敗は、初めて商品を手にする方もし得る失敗だと思うので、経験がないからこそ自分たちが等身大で発信することの意義を大事にしています。

平野さん:私は高校生の時に、地元の広島で西日本豪雨を経験しましたが、時間が経つにつれて、当時持った防災意識がだんだんと薄れていっていました。そんな中でフェリシモに入社して防災に関わるようになって、きれいごとではなく、「やってもらえる防災」をしないといけないという想いを持ちました。どうしても二の次になってしまいがちな防災について、企業としてしっかりみなさまを後押しできるように取り組んでいかないといけないと思っています。

藤原さん:私は阪神・淡路大震災が発生した年に生まれましたが、これまで大きな災害に遭ったことはなかったので、正直、防災を自分事として捉えられていなかったんです。そのためSNSで発信する際には、親しみやすくわかりやすい、気張らず自然に見ていただけるような内容にすることを心がけています。

被災地支援への想い

フェリシモでは災害への個人の備えだけでなく被災地支援にも力を入れています。阪神・淡路大震災がそのきっかけです。一口100円から参加できる義援金窓口や、商品代金の一部が支援につながる取り組みなど、誰でも気軽に支援の想いを届けられる仕組みづくりにも力を入れています。

武智さん:阪神・淡路大震災の際、全国から物資や現金とともに「少しでも神戸の復興に」と多くの声がフェリシモに届きました。その後、東日本大震災の際には、100円から参加できる義援金窓口の開設や被災地の起業家の方のサポート等も行ってきました。そういう活動を点ではなく、線、面に広げて、次の世代、防災に関心のない人たちにも繋げていきたいです。自分たちは建物を建て直すことはできないけれど、支援したいという人の想いを届けることはできる。「誰も取り残さない防災」をテーマに自分たちにできることに取り組み、活動の輪を広げていきたいと考えています。

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