[写真 左から:平野さん 武智さん 加藤さん 藤原さん 山川さん]
阪神・淡路大震災が発生した1995年に本社を大阪から神戸に移転した株式会社フェリシモ。復興する神戸とともに30年、被災地への支援や防災事業にも取り組んできました。その中でも「もしもしも 備蓄でお守り ~KOBE BOX~」はこれまでの備蓄食とは異なる提案をしています。
「もしもしも 備蓄でお守り ~KOBE BOX~」は、約1日分の食事をつめこんだ1日3食プラスおやつのパッケージです。2024年に販売を始め、全国から注文が入っているといいます。第一弾ではいずれも神戸の企業である、フジッコ株式会社、株式会社神明、エム・シーシー食品株式会社、モロゾフ株式会社、神戸ポートピアホテルの協力を経て、スパイスの効いたカレーをメインに惣菜や甘いお菓子など、非常時でも食事を楽しめる内容となっています。
神戸の企業と備蓄食を
フェリシモは定期便の商品販売をメインとする企業ですが、震災の経験・教訓から備蓄食を販売したいという想いがあったそうです。その想いの一方で、フェリシモだけでは備蓄食そのものを作ることができないという問題がありました。そんな中、同じ神戸市内の企業であるフジッコ株式会社が宇宙食の販売を行っていることを知ります。宇宙食と備蓄食、限られた環境で食べるものという共通点から、フェリシモはフジッコ株式会社に声をかけ、備蓄食の販売へ動き出しました。
そう話すのは、KOBE BOX開発に携わった武智直久さんです。個人的に、いわゆる備蓄食といわれるものは賞味期限が長い一方、美味しくなさそうというマイナスイメージがありました。宇宙食がラインナップに組み込まれることで、ワクワク感や宇宙食への関心から、そのイメージを脱却できると考えたそうです。また、神戸のメーカーのみで商品をラインナップし、神戸という地域の魅力と震災への共通した思いを伝えたいと思いました。
おいしさか、保存性か。備蓄食へのハードル
一般的な備蓄食の賞味期限は3〜5年ほどのものが多いのですが、食品メーカーには「お客様に美味しく食べてほしい」という想いがあり、備蓄食として求められる長い賞味期限を理由に提案を断られることもあったそうです。また、お客様にせっかく購入いただいても数年の間にその存在を忘れ、賞味期限が切れてしまうのでは、という心配もあるなど、長期間備蓄してもらうには課題がありました。
そこで、武智さんが目を付けたのがローリングストックです。備える・使う・補充する、の循環を繰り返し、一定量の食料品や生活必需品の備えを目指すローリングストックは、災害対策において重要な役割を果たします。その期間を短くすることで美味しさと防災の両立を目指しました。このボックスでは、最短6ヶ月のスパンでのローリングストックを提案し、フェリシモの定期購買システムと連動して新しい備蓄の形を目指しています。
「自分たちにできることは限られている。これはあくまできっかけ作り」とフェリシモの企画チームの皆さんは繰り返し強調します。自然災害が増加する近年、防災への意識は高まりつつありますが、実際にそれを実行するのは難しい。自助、最低限できる備えのきっかけとして備蓄でお守り「KOBE BOX」を利用してほしいと言います。人によって必要な備えは異なります。ボックスを軸に、離乳食やおかず、飲み物などをカスタマイズすることで、みんなで考える防災につながる。防災を、非日常から日常へ取り入れられるような提案をフェリシモは続けています。

インタビュー記事の中で紹介している
KOBE BOX (2024年3月発売)

現在はKOBE BOX2 (2025年12月発売) を
販売中です
震災を経験していないからこその発信を
また、フェリシモの公式SNSアカウントでは、「もしもしも」の商品を動画にして紹介しています。実際に商品を使ってみることで気が付けることなどをリアルに発信しつつ、明るい雰囲気で場面に応じた商品の紹介を行っています。SNSでの発信に取り組む若手社員の皆さんにもお話を伺いました。
被災地支援への想い
フェリシモでは災害への個人の備えだけでなく被災地支援にも力を入れています。阪神・淡路大震災がそのきっかけです。一口100円から参加できる義援金窓口や、商品代金の一部が支援につながる取り組みなど、誰でも気軽に支援の想いを届けられる仕組みづくりにも力を入れています。
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武智さん:いわゆる「備蓄食」のサンプルを以前いただいたことがあったのですが、あまり食べる気にならなかったんですよね。何となく美味しそうじゃない。でも、宇宙食と聞いたらちょっと食べたくなりました。宇宙食と備蓄食は同じものではないですが、震災から30年を迎えるということもあり、自分たちにできることに取り組んでいこうと思い、フジッコさんをはじめ、市内の企業さんと連携して備蓄食の通信販売に踏み出しました。