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No.
02

神戸大学学生震災救援隊代表
鈴木 蒼生さん (3年・代表)
取材日 : 2024年12月17日

[ 写真:鈴木さん ]

神戸大学学生震災教援隊は阪神・淡路大震災をきっかけに発足したサークルで、代替わりを繰り返しながら現在も活動を続けています。30年間受け継がれている活動や活動への想い等を現在の代表である鈴木さんに伺いました。

震災の教訓からつないできた活動

神戸大学学生震災救援隊での活動内容を教えてください。

鈴木さん:救援隊の中にはいくつかの団体があり、それぞれが活動を行っています。例えば、灘区で地域の方たちと復興祭を運営していたり、復興住宅で住民さん相手にお茶会を運営したり、チンドンの芸を通して地域のイベントで賑やかしを行ったりしています。震災をきっかけに発足した団体ではあるんですけど、災害で見えてきたまちの問題にも取り組んできた団体で、特に人と人とのつながりを大事にしてきました。

そういった活動はこの30年間で、どのように受け継がれてきたのですか。

鈴木さん:震災の日の夜に当時神戸大学の購買で働いていた学生が炊き出しをしたのが活動の始まりと聞いています。そこからどんどん状況が変わっていき、今の活動になりました。まちとの関わりを大事にしようということで、当時は仮設住宅でサロン会を開いたりとか、復興祭のお祭りも震災から半年たってみんなでやろうと言ったり、チンドン屋をして音楽で人を励まそうとか、今の活動は震災後のそういった活動が元になっているみたいです。当時活動されていた方からも「震災当時のことを忘れてほしくない、記憶はどうしても風化してしまうが、自分たちが経験したことをなかったことにはしてほしくない」とよく言われるのですが、震災を知らない世代の学生だけで現在まで活動を続けられているのは、その想いを少しは継げているのではないかと思っています。

2024年1月に発生した能登半島地震に対して何か活動はされていますか。

鈴木さん:発災直後の昨年の1月から能登半島地震の支援活動を始めました。1月2日には、JR六甲道駅で募金を呼びかけて、結構たくさんの人がお金を入れてくださったり、「神戸も昔大変やったから」「頑張ってね」と声もかけてくださったりして、励みになりました。その後、2024年1月下旬に初めて石川県七尾市に行きました。その時は、避難所に行って足湯をし、1対1でお話を聞きました。被災地にいる人は、基本的には皆被災者で自分の被害や苦しさを言いにくかったりするので、逆に部外者の僕たちの方が想いをぽろっと言ってもらえることもあるように思います。被災した直後の方と関わることは僕にとって初めての経験だったのですが、普段の活動のなかで復興住宅でお茶会をしたりして、自分と違う属性の人や過去に被災したことがある人と話す経験があったので、そこまで臆病になりすぎずに現地の人たちと関わってみようと思えました。

学生震災救援隊に入る前に、阪神・淡路大震災との繋がりはありましたか。

鈴木さん:僕は生まれも育ちも大阪で、これまでの人生で災害の被害に遭ったことはなくて、家族も阪神・淡路大震災のときにそこまでの被害を受けていないです。なので、神戸でこの団体に入るまで、阪神・淡路大震災を大きなこととして捉えたことはほぼなかったです。このまちに住んで、昔から神戸にいる人たちと関わってから、自分につながりのあることとして捉えられるようになりました。

学生だからこそできること

学生主体で活動するモチベーションは何ですか。

鈴木さん:これだけ自由に動けるのは学生の特権だと思っています。忙しいんですけど、自由な時間と自分の頭で運営できるのは楽しいです。救援隊って、リーダータイプの人があまりいなくて、その代わりに人のことを支えたり思いやったりできる人が多いんです。僕もリーダータイプではないんですけど、皆が活動する下地を整える仕事ができるのは良い経験だと思っています。

震災を経験していない世代の学生が、震災の復興祭を行う意義は何だと思いますか。

鈴木さん:僕も明確な答えがなくて、だからこそ東北や能登の被災地に行って考えているところでもあります。ただ色んな場所で活動できるのは学生の特権ですし、特に神戸大学は神戸以外からも学生が来るので、自分が知らない土地に来てそのまちの一員になる活動に参加できることは意味のあることだと思っています。

学生と地域のつながりを活発に

現在の活動の悩みや課題はありますか。

鈴木さん:僕が在籍している3年間しか団体や神戸のことは知らないのですが、コロナ禍もあって、昔と比べて学生と地域のつながりが若干薄くなっているのかなと思います。救援隊の活動をするうえで、地元の方には復興祭への協賛や模擬店の出展にご協力いただいているほか、お茶会でも復興住宅の自治会の方にご協力いただいたりしているので、その人たちが行うイベントにも学生が一緒に協力して、お互い協力できるようなフラットな関係が築けたらいいなと思います。

今後取り組んでみたい活動はありますか。

鈴木さん:大学の近くにも商店街があって、良いお店もいっぱいありますし、そこに学生を呼んでいっしょに色んな属性の人を巻き込んで色々やっていけたら面白いのではないかと思います。うちと関わっている子供や障がい者支援団体や地域のお店の方に「昔は学生さんが来てくれてたんやけどね~」と言われることがよくあるので、今の学生はあまり関われていないんだなと思います。

最後に震災を経験していない10代・20代の方にメッセージをお願いします。

鈴木さん:自分が暮らしているまちのことを知ったり、まちの人と話したりすることは、自分の知らないことを色々知ることができて楽しいですし、そこでできた関係性はいずれ災害が起きたときにも役立つかもしれません。仮に災害が起きなかったとしても、人と人とのつながりを持つことで自分の生活が豊かになる、ということを伝えたいです。

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