
阪神・淡路大震災の教訓から、神戸市内の各地で結成されている自主防災組織・「防災福祉コミュニティ」。神戸市内に191団体ある防災福祉コミュニティの中でも、津波防災マップの作成や小学校との避難訓練等、防災活動に積極的に取り組んでいる「魚崎町防災福祉コミュニティ」会長の清原さんにお話を伺いました。
阪神・淡路大震災の教訓から、神戸市内の各地で結成されている自主防災組織・「防災福祉コミュニティ」。神戸市内に191団体ある防災福祉コミュニティの中でも、津波防災マップの作成や小学校との避難訓練等、防災活動に積極的に取り組んでいる「魚崎町防災福祉コミュニティ」会長の清原さんにお話を伺いました。
現在の活動内容をお聞かせください。
阪神・淡路大震災当時のことをお聞かせください。
清原さん:神戸の人は阪神・淡路大震災を経験するまで、神戸では地震は起こらないと油断していて、災害への備えができていなかったように思います。だから家屋が倒壊して下敷になっている人を救出するのにも、資材を用意しておらず、素手で救出していました。私の家も倒壊したのですが、そのときどういう気持ちになったかというと、どうにでもなれという感じで、これから頑張ろうという気が起こるまでにはかなりの時間がかかりました。当時自分がまだ45歳ぐらいのときは、「災害には負けない」という強い気持ちを奮い立たせて、自分の生活を続けていくために、家を再建したり会社を興したりして一生懸命頑張りました。ただ、被災した状況は一人ひとり違います。例えば家族を失った方や友達を亡くした方もいたと思いますが、そういった人たちが、すぐに頑張ろうという気持ちになれるとは限りませんので、他の人の心を思いやるということが非常に大事だと思います。
南海トラフ地震など、これからの災害に備えて何が大切だと思いますか。
清原さん:南海トラフ地震は必ず起こります。それに備えるための自助として、家屋の耐震強度の補強、家具の固定、それから備蓄品の用意、非常持ち出し品の準備、さらに、防災の1番の基本ですが、日頃から近くの人たちと顔の見える関係を作っておくことが重要です。一朝一夕にできるものではありませんが、日頃から顔の見える関係を築いておくことはすぐに取り組めることですし、重要だと思います。
現在の活動に課題はありますか
清原さん:私たちは阪神・淡路大震災を経験しましたが、南海トラフ地震が起こる時には、我々世代は当時のようには動けないと思います。防コミ等で地域のために頑張っている人がみな高齢化しているので、若い世代をどう引き込むか、どうやったら協力してもらえるか、ということが大きな課題だと思っています。だから自治会の中でも、役員を新しく若い人に交代していかないといけないとは思うのですが、皆さん定年が延びて75歳くらいまで働いていたりもしますし、なかなか難しいですね。
震災の経験を伝えるためには、どのような取り組みが必要だと思いますか。
清原さん:震災を経験していない人が、震災当時にどんな状況になったか、どんな経験をしたかを知るための取組みとして、学校等での震災・防災学習があると思います。そういった学習は必要なことだと思いますが、一つの「知識」に終わらせてしまっては何の意味もないと思います。覚えた知識を自分事として考えてほしい。自分事としてとらえてもらえると値打ちがありますが、一つの知識とするだけでは、若い人たちがせっかく学んだ時間が無駄になると思います。消火器を実際に使用する訓練など、体験が伴うものだと分かりやすいですが、知識を身に着けるだけでなく、その知識を実際に災害が起きた時にどう活かせるのかまで考えてほしいですね。学習だけでなく、訓練が大事です。
震災を知らない10代20代にメッセージをお願いします。
清原さん:災害が起きた時、地域の方々と協力して自分にできることを行う勇気を持っていただきたいと思います。そのため、日頃から顔の見える関係を作ってくことが重要です。阪神・淡路大震災の経験・教訓を勉強する、知識として覚えるということも必要ですが、やはり顔の見える関係性を作ること、ご近所の人に「おはようございます」と言える気持ちを大事に取り組んでいっていただきたいと思います。知識だけでは何の役にも立ちませんが、しっかり勉強もして、自分事としてとらえてください。君たちの活躍を祈っています。
清原さん:我々の魚崎町防災福祉コミュニティ(魚崎防コミ)は22の町内の自治会と婦人会、民生委員協議会、消防団防災ジュニアチームのメンバーで構成されており、「自分の命は自分で守る」という自助の浸透、それから魚崎町から「1人の犠牲者も出さない」ということを目標に活動しています。
具体的な取り組みとして、魚崎防コミでは「津波防災マップ」を作成しています。マップには、「魚崎町の津波到達時間は地震発生後、約110分」、「最低でも阪神電車より北へ!」のように、平時からの備えや津波発生時の避難など、防災・減災に関する重要な情報をまとめています。神戸市の協力を得ながらこのマップを作り、各自治会を通して住民の皆さんに全戸配布しているのですが、こういう震災への備えを進めていかないと、阪神・淡路大震災の経験や教訓が風化してしまうのではないかと思うんです。 また、魚崎防コミでは、「地域お助けガイド」も作成しています。このガイドでは、主に平時の防災福祉コミュニティの取組みや役割、災害時に避難所運営をどのように行うのかなどが記載されています。これもやはり自分の命や身を守る、それから地域から1人の犠牲者も出さないために重要なものだと考えています。